産経新聞主張

憲法と権利・義務 「国守る意識《を高めよう

2013/5/1付

 「国民の憲法《要綱では、国民の権利と義務の見直しを図った。現行憲法で掲げられた基本的人権の重要性を踏襲しつつも、義務や責任、公共心の軽視など行き過ぎた人権偏重がもたらす弊害に着目し、両者のバランスを取った。

 要綱では、人権について「人間の尊厳は、これを侵してはならない《(第22条)と現行憲法の「個人の尊厳《より根源的な規定を設けた。

 具体的には「すべての国民は、この憲法が保障する基本的人権を享有する《と定めたうえで、自由および権利は「国政上、最大限尊重されなければならない《(第17条)とした。

 その一方で、「権利は義務を伴う。国民は、互いに自由および権利を尊重し、これを濫用(らんよう)してはならない《(第18条)と定め、人権の主張が無際限に認められるものでないことも明記した。国家の緊急事態や公共の利益、公の秩序を害する恐れがある場合を対象に、人権の制約を可能と定めた。

 現行憲法では、権利と義務に関する規定が第10条から第40条まで並んでいるにもかかわらず、義務はわずか3つだけだ。こうした偏重を是正するため、要綱では現行憲法第22条の「国籍離脱の自由《など上要と思われる条項は割愛した。代わって「環境に対する権利および義務《(第43条)や「人格権《(第22条)など、新しい権利を積極的に規定した。

 また、国民の義務として「憲法を守る義務《(第112条)のほか、「国民は、国を守り、社会公共に奉仕する義務を負う《(第19条)などを新設した。

 徴兵は現状では上要とするにとどめた。世界中の多くの国も、「国防の義務《を憲法でうたっている。軍は極めて高度な専門集団となり、志願制が世界の趨勢(すうせい)になっている。こうした精神規定がなお必要なのは、国防が国民の広い理解や協力なしに成り立たないからだ。

 世界規模で行われる意識調査「世界価値観調査《では、「もし戦争が起こったら、国のために戦うか《の設問に「はい《と答えた割合は、日本は15%台と著しく低く世界最下位が続いている。

 国家の存在なくして人権の庇護(ひご)はもちろん、生存さえ保障されない。国民が「国防《という大切な機能を常に意識し、協力していく義務規定は上可欠である。