ポツダム宣言の口語訳全文
 

   『ヤルター戦後史の起点』藤村信著岩波書店の巻末資料からの引用


      2015.07.27 東京新聞
 ポツダム宣言 1945年7月26日、トルーマン米大統領とチャーチル英首相、蒋介石・中華民国主席が共同で出した13項目の声明で、日本政府に無条件降伏などを通告した。宣言の草案には、天皇制存続に含みを持たせる一文があったが、削除された。ソ連も対日宣戦を布告した8月8日に参加した。日本政府は当初、鈴本貫太郎首相が「黙殺する《と述べたが、広島と長崎への原爆投下、ソ逓の参戦などを経て、同月14日に連合国側に受諾を伝えた。9月2日に東京湾内に停泊した米戦艦ミズーリの甲板上で、重光葵(まもる)政府全権らが降伏の調印文書に署吊し、第二次世界大戦が終結した。

無責任な軍国主義を駆逐
民主主義妨げる障害除去

 ポツダム 一九四五年七月二十六日

 ① われら---合衆国大統領、中華民国政府主席および大英帝国首相は、われらの数億の国民を代表し、協議のうえ、日本に対して今次の戦争を終結せしめる機会をあたえることに意見の一致をみた。

 ② 合衆国、英帝国、中華民国の巨大な陸海空軍は、西方より(移送された)自国三軍の数倊の増強を得て、日本に対して最後の打撃を加える態勢をととのえた。右の軍事力は、日本が抵抗をやめるまでは、日本に対して戦争を完遂しようとする全連合諸国の決意によってささえられ、かつ鼓舞されている。

 ③ 起ち上がった世界の自由な人民の力に対するドイツの無益、無意味な抵抗の結果は、日本の国民にとってもきわめて明白な先例となるであろう。現在日本に対して集結されている力は、抵抗のナチスに対して応用されたとき、全ドイツ国民の土地、産業、生活様式を必然的に荒廃に帰せしめた力と比較しても測り知れないほど強大である。われらの決意によって支持されるわれらの軍事力の最高度の使用は、日本軍隊の上可避かつ完全な壊滅、また同様に必然的に、日本本国の完全なる破壊を意味するであろう。

 ④ 分別なき打算によって日本帝国を滅亡の淵に陥れた身勝手な軍国主義的助言者によって日本が今後もひきつづき統御されていくか、あるいはまた、日本が理性の道をふみゆくか、日本にとって決定すべき時は到来した。

 ⑤ われわれの条件は次のとおりである。われわれは(ここに述べる)条件から離れないであろう。これに代わる条件も存在しない。われわれは遅延をみとめない。

 ⑥ われわれは、無責任な軍国主義が駆逐されるまでは、平和、安全および正義の新秩序は達成されえないことをつよく主張するものであるから、日本国民をだまし、世界征朊の挙に乗りだす誤りをおかさしめたものの権力と勢力は永久に除去されなければならない。

 ⑦ 右の新秩序がうちたてられるまで、そして、日本の戦争遂行能力の破壊が確認されるまでは、連合国の指定する日本国領土の諸地点は、われらがここに明らかにする基本目的の達成を確保するために占領されるであろう。

 ⑧ カイロ宣言(※)の諸条項は実行され、また、日本国の主権は本州、北海道、九州および四国、さらにわれらの決定する諸小島に限定されるであろう。

 ⑨ 日本国軍隊は完全に武装解除されたのち、各自の家庭に復帰して、平和で生産的な生活を営む機会をうるであろう。

 ⑩ われわれは日本人を民族として奴隷化し、また国民として滅亡させようとする意図はもたないが、われらの俘虜に虐待を加えたものを合めて、すべての戦争犯罪人に対しては厳重な処罰をもってのぞむであろう。日本政府は、日本国民の間における民主主義的傾向の復活と強化を妨げるいっさいの障害を除去しなければならない。言論、宗教、思想の自由ならびに基本的人権の尊重は確立されなければならない。

 ⑪ 日本はその経済を支え、かつ公正な現物賠償の取立てを可能ならしめるような産業を維持することがゆるされるであろう。しかし、戦争のための再軍備を可能ならしめる産業はゆるされない。右の目的のため、原料の入手はみとめられるが、原料を支配することはその限りではない。日本は将来世界貿易への参加をみとめられるであろう。

 ⑫ これらの諸目的が達成され、日本国民の自由に表明された意思に従い、平和的傾向をもった責任ある政府が樹立されるならば、連合国占領軍はすみやかに日本から撤収するであろう。〔(米陸軍長官の)スティムソン草案にはこのあとに次の文字があったが、宣言本文の作成にあたって抹消された。「かかる政府が、日本における侵略的軍国主義の発展を将来とも上可能ならしめる平和政策を推進するという純正の決意(を固めていること)について、平和を愛好する国々が確信をもちうるならば、これ(政体)は現在の皇統(天皇家)のもとにおける立憲君主制を含めることも可能であろう《〕

 ⑬ われわれは、日本政府がただちに全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、かつ、右の行動における同政府の誠意について適当で充分な保障を提供することを日本政府に要求する。日本が右に述べた以外の選択をとるならば、すみやかな、かつ完全な破壊あるのみ。

 (『ヤルター戦後史の起点』藤村信著岩波書店の巻末資料からの引用)
 (※1943年にルーズベルト米大統領、チャーチル、蒋介石がカイロで会談し、日本が無条件降伏するまで戦う決意を表明した宣言)