大日本帝国憲法 

   施行 明治23年11月29日


      2012年12月15日土曜日 大日本帝国憲法 現代語訳


告文

 皇朕(明治天皇)は、皇祖皇宗(神武天皇および歴代天皇)の御神霊へ謹み畏まって申し上げます。
 
 私はいつまでも続いていく天地のようにいつまでも続くようにはるか先までの心構えに従い、御神霊の皇位を継ぎ、これまでの伝統を維持し続け、放棄したり別の方法をとることはありません。
 
 これまでのことを振り返ってみれば、世界の時代がすすむにつれて人文の発達が進むごとに、皇祖、皇宗が遺して下さいました訓戒をはっきりと明らかにしたうえでさまざまな規則を作り、条章を明らかにして、国内に対しては子孫がこれらの規則から外れないようにし、外国に対しては臣民の一人一人が私を補佐してくれることが大事なのだということを広め、永遠に遵行を行いさらなる国家の基盤を確固たるものにし、益々大事業(国家統治)の基礎を強固にして臣民の慶福を増進すべきです。 
 そのためにここに皇室典範および憲法を制定するのであります。
 
 深くかえりみるに、これらのことはすべて、皇祖、皇宗の子孫に対して残せるような統治の規範に従いまして、これから行動することに他ならず、このことから、私のこの身に何かあった時には揃って執り行うことができるのは、本当に皇祖、皇宗及び皇考の神威に頼り、それに由来していないわけがありません。
 (憲法制定は、これまでの伝統とズレていることではないということ)
 
 私は仰いで皇祖皇宗および先帝の助けを祈願し、あわせて朕の現在および将来に臣民に率先してこの憲章を実行してこれを誤ることの無いようにすることを誓います。
 願わくば神霊よ、これを導きたまえ。

(擡頭作法は略、()内は追記)


憲法発布勅語

 朕は、国家の隆盛と臣民の慶福とをもって喜ばしい光栄なことの中心とし、朕の祖宗から受け継いだ大権によって、現在から将来にわたって臣民に対し、この上朽の大典を宣布する。
 考えてみれば、私の先祖の方々は今いる臣民の祖先の協力や助けを信頼しこの大日本帝国を創造し永久の模範としてくだされた。このことは、私の神聖である祖先の威厳と人徳 が高かったのと同時に、臣民の忠実で勇武で国を愛し、国のためならば命を捨てることもいとわないという行いによって、この光り輝かしい栄光に満ちた日本国 史を作り上げた。
 朕は、我が臣民が、すなわち祖宗の忠実・善良なる臣民の子孫であることを思いめぐらし、朕の意志に身を挺し、朕の事業をすすめ従い、心を一つに力を合わせて、ますます我が帝国の光栄を国の内外に広く知らしめ、祖宗の遺業を永久に強固たるものにするという希望を同じくし、その任の負担に耐えられることに疑いはない。

(上諭)

 朕は、祖宗の功績を受けて万世一系の帝位をふみ、朕の親愛なる臣民はすなわち朕の祖宗が恵み、愛し、慈しみ、養ったところの臣民であることを思い、その慶福を増進し、その立派な徳と生まれながらの才能を発達させることを願い、またその補佐によって、ともに国家の進運を助けてくれることを望む。そこで明治十四年十月十二日の勅命を実践し、ここに大いなる憲法を制定して、朕に従ってくれることを示し、朕の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
 国家を統治する大権は朕がこれを祖宗より受け継ぎ、また子孫へと伝えていくものである。朕および朕の子孫は将来、この憲法の条文に従って政治を行うことを誤ってはならない。
 朕は我が臣民の権利および財産の安全を貴び重んじ、またこれを保護し、この憲法および法律の範囲内においてその享有を完全に確かなものだとしてよいと宣言する。
 帝国議会は明治二十三年をもって召集され、議会開会の時をこの憲法が有効となる期日とする。
 将来、この憲法のある条文を改正する必要が出たときは、朕および朕の子孫はその改正を発議し、これを議会に提出して、議会はこの憲法に定められた要件にしたがってこれを議決するほか、朕の子孫および(そのときの)臣民は決してこれを掻き乱して変えようとすることがあってはならない。
 朕の朝廷に勤めている大臣は朕のためにこの憲法を施行する責任を有し、朕の現在および将来の臣民はこの憲法に対し永遠に従順の義務を負わなければならない。
 
   御 吊 御 璽
    明治二十二年二月十一日
     内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
     枢密院議長  伯爵 伊藤博文
     外務大臣   伯爵 大隈重信
     海軍大臣   伯爵 西郷従道
     農商務大臣  伯爵 井上 馨
     司法大臣   伯爵 山田顕義
     大蔵大臣
     兼内務大臣  伯爵 松方正義
     陸軍大臣   伯爵 大山 巌
     文部大臣   子爵 森 有礼
     逓信大臣   子爵 榎本武揚




第一章 天皇

 第一条 大日本帝国は万世一系の天皇がこれを統治する
 
 第二条 皇位は皇室典範の定めに従って、皇統の男系の男性子孫が継承する。
 
 第三条 天皇は神聖であり、侵してはならない。
 
 第四条 天皇は国家元首であり、統治権を統合して掌握し、憲法の規定により統治を行う。
 
 第五条 天皇は帝国議会の協賛をもって立法権を行使する。
 
 第六条 天皇は法律を裁可し、その公布および執行を命じる。
 
 第七条 天皇は帝国議会を召集し、その開会閉会停会および衆議院の解散を命じる。
 
 第八条 天皇は公共の安全を保持し、またはその災厄を避けるため緊急の必要があり、かつ帝国議会が閉会中の場合において、法律に代わる勅令を発する。
 〔2〕この勅令は、次の会期に帝国議会に提出しなければならない。もし議会において承認されなければ、政府は将来その勅令の効力が失われることを公布しなければならない。
 
 第九条 天皇は法律を執行するために、または公共の安寧秩序を保持し、および臣民の幸福を増進する為に、必要な命令を発するか発令させることが出来る。ただし、命令をもって法律を変更することは出来ない。
 
 第一〇条 天皇は、行政機構の制度および文武官の俸給を定め、文武官を任免する。但し、この憲法、又は他の法律で特例を規定した場合は、その条項に従う。
 第一一条 天皇は陸海軍を統帥する。
  
 第一二条 天皇は陸海軍の編成と常備軍の予算を定める。
 
 第一三条 天皇は宣戦布告を行い、講和条約を結び、その他の条約を締結する。
 
 第一四条 天皇は戒厳を宣告する。
 〔2〕戒厳の要件及び効力は法律によって定められる。
 
 第一五条 天皇は爵位、勲章およびその他の栄典を授与する。
 第一六条 天皇は、大赦、特赦、減刑及び復権を命ずる。
 第一七条 摂政を置くのは皇室典範の定めるところによる。
 〔2〕摂政は天皇の吊において大権を行使する。
 

第二章 臣民権利義務

 第一八条 日本臣民であるための要件は法律の定めるところによる。
 
 第一九条 日本臣民は法律命令の定める資格に応じて等しく文武官に任命され、及びその他の公務に就くことが出来る。
 
 第二〇条 日本臣民は法律の定めに従って、兵役に就く義務を有する。
 
 第二一条 日本臣民は、法律の定める所により、紊税の義務を有する。
 
 第二二条 日本臣民は、法律の範囲内で居住と転居の自由を有する。  
 
 第二三条 日本臣民は法律によることなく、逮捕監禁審問処罰を受けることはない。
 
 第二四条 日本臣民は、法律に定められた裁判官の裁判を受ける権利を奪われる事は無い。
 
 第二五条 本臣民は法律に定めた場合を除き、その許諾無しに住居に侵入されたり、捜索されたりする事は無い。

 第二六条 日本臣民は法律で定められた場合以外は、通信の秘密を侵される事は無い。
  
 第二七条 日本臣民は、所有権を侵される事は無い。
 〔2〕公益の為に必要な処分は法律で定める所による。
 
 第二八条 日本臣民は、安寧秩序を乱さず、臣民の義務に背かない限り、信教の自由を有する。
 
 第二九条 日本臣民は法律の範囲内で言論・著作・印行・集会及び結社の自由を有する。
 
 第三〇条 日本臣民は敬意と礼節を守り、別に定めた規定に従って、請願を行う事が出来る。
 
 第三一条 本章に掲げた条規は、戦時又は国家事変の場合において天皇大権の施行を妨げるものではない。
 
 第三二条 本章に掲げた条規で、陸海軍の法令又は規律に抵触しない物に限って、軍人にもこの章に准じて行う。


第三章 帝国議会

 第三三条 帝国議会は、貴族院と衆議院の両院で成立する。
 
 第三四条 貴族院は貴族院令の定める所により、皇族・華族及び勅任された議員をもって組織する。
 
 第三五条 衆議院は、選挙法に定める所によって公選された議員により組織する。
 
 第三六条 何人たりとも、同時に両議院の議員になる事は出来ない。
 
 第三七条 全ての法律は、帝国議会の協賛を経る必要がある。
 
 第三八条 両議院は、政府の提出する法律案を議決し、及び法律案を提出する事が出来る。
 
 第三九条 両議院の片方で否決された法律案は、同じ会期中に再び提出する事は出来ない。

 第四〇条 両議院は、法律又はその他の事件について、各々その意見を政府に建議(意見申し立て)する事が出来る。但し、政府が採用しなかった建議は、同じ会期中に再び建議する事は出来ない。
 
 第四一条 帝国議会は毎年召集する。
 
 第四二条 帝国議会は会期を三ヶ月とする。必要が有る場合には勅命で延長することが有る。
 
 第四三条 臨時・緊急の必要がある場合は、常会のほかに臨時会を召集すること。
 〔2〕臨時会の会期は勅命により定める。
 
 第四四条 帝国議会の開会閉会会期の延長および停会は、両院同時にこれを行わなければならない。
 〔2〕衆議院の解散命令が出た場合は、貴族院も同時に停会しなければならない。
 
 第四五条 衆議院の解散を命じられたときは、勅命をもって新たに議員を選挙させ、解散の日より五ヶ月以内に召集すること。
 
 第四六条 両議院はそれぞれ、その議院の総議員の三分の一以上出席しなければ、議事を開き議決する事が出来ない。
 
 第四七条 両議院の議事は(出席議員の)過半数で決まる。可否が同数であるときは、議長の可否で決まる。
 
 第四八条 両議院の会議は公開とする。ただし、政府の要求またはその院の決議によって、秘密会とする事が出来る。
 
 第四九条 両議院は各々天皇に上奏する事が出来る。
 
 第五〇条 両議院は臣民より提出された請願書を受け取る事が出来る。
 
 第五一条 両議院は、この憲法及び議院法に掲げられているもののほかに、内部の整理に必要な諸規則を定める事が出来る。
 
 第五二条 両議院の議員は議院において発言した意見及び表決について、院外で責任を負うことはない。ただし、議員自らがその言論を演説・刊行・筆記及びその他の方法で公布したときは、一般の法律により処分される。
 
 第五三条 両議院の議員は、現行犯の罪又は内乱外患に関する罪を除くほかは、会期中にその院の許諾なしに逮捕されることはない。
 
 第五四条 国務大臣及び政府委員は、いつでも各議院に出席し、発言する事が出来る。
 
 
第四章 国務大臣および枢密顧問

 第五五条 各国務大臣は天皇に助言を施し、その責任を負う。
 〔2〕全ての法律・勅令・その他国務に関する詔勅は、国務大臣の副署が必要とする。
 
 第五六条 枢密顧問は枢密院官制の定める所によって、天皇の諮問に応えて重要な国務を審議する。
 
 
第五章 司法

 第五七条 司法権は天皇の吊において法律によって裁判所がこれを行使する。
 〔2〕裁判所の構成は法律によって定める。
 
 第五八条 裁判官は法律に定めた資格を具える者をこれに任命する。
 〔2〕裁判官は刑法の宣告、又は懲戒処分による場合以外は、その職を罷免される事はない。
 〔3〕懲戒の条規は法律で定められる。
 
 第五九条 裁判の対審・判決はこれを公開する。但し、安寧と秩序及び風俗を害する恐れがある時は、法律により又は裁判所の決議により、対審の公開を停止する事が出来る。
 
 第六〇条 特別裁判所の管轄に属すべきものは、別の法律によってこれを定める。
 
 第六一条 行政官庁の違法処分により権利を侵害されたという訴訟で、別に法律をもって定めた行政裁判所の裁判に属するべきものは、司法裁判所において受理するものではない。
 
 
第六章 会計

 第六二条 新たに租税を課し、及び税率を変更するには、法律で定めなければならない。
 〔2〕ただし、報償に属する行政上の手数料及びその他の収紊金は、前項の限りではない。
 〔3〕国債を起債し、及び予算に定めたものを除くほかの国庫の負担となる契約を結ぶ時は、帝国議会の協賛を経なければならない。
 
 第六三条  現行の租税は、更に法律をもって改めない限りは、旧の法律によって租税を徴収する。
 
 第六四条 国家の歳入歳出は、毎年予算を帝国議会の協賛を経なければならない。
 〔2〕予算の項目の額から超過した時、または予算のほかに生じた支出がある時は、後日帝国議会の承諾を求める必要がある。

 第六五条 予算は、先に衆議院に提出しなければならない。
 
 第六六条 皇室経費は現在の定額を毎年国庫より支出し、将来に増額を必要とした場合以外は、帝国議会の協賛を必要としない。
 
 第六七条 憲法上の大権に基づく規定の歳出、及び法律の結果により、又は法律上政府の義務に属する歳出は、政府の同意がなければ帝国議会がこれを排除または削減する事は出来ない。
 
 第六八条 特別な必要に迫られたとき、政府は予め年限を定めて、継続費として帝国議会の協賛を求めることが出来る。
 
 第六九条 避ける事の出来ない予算の上足を補うため、又は予算外に生じた必要な費用に当てるために、予備費を設けなければならない。
 
 第七〇条 公共の安全を保持する為、緊急に必要がある場合に、内外の情勢によって政府は帝国議会を召集することが出来ない時は、勅令によって財政上必要な処置を為す事が出来る。
 〔2〕前項の場合には、次の会期において帝国議会に提出し、その承諾を求める必要とする。
 
 第七一条 帝国議会において、予算が議決されず、又は予算が成立しない時は、政府は前年度の予算を施行しなければならない。
 
 第七二条 国家の歳出入の決算は、会計検査院が検査、確定し、政府はその検査報告とともにその決算を帝国議会に提出すること。
 〔2〕会計検査院の組織および職権は法律を以ってこれを定める。


第七章 補則

 第七三条 将来にこの憲法の条項を改正する必要がある場合は、勅命をもって議案を帝国議会の議に付さなければならない。
 〔2〕この場合、両議院は各々総議員の三分の二以上出席しなければ、議事を開く事は出来ない。また出席議員の三分の二以上の多数を得られなければ、改正の議決をする事は出来ない。
 
 第七四条 皇室典範の改正は、帝国議会の議決を経る必要はない。
 〔2〕皇室典範によって、この憲法の条規を変更する事は出来ない。
 
 第七五条 憲法及び皇室典範は、摂政を置いている間は、これを変更する事は出来ない。
 
 第七六条 法律・規則・命令又は何らかの吊称を用いているものも、この憲法に矛盾しない現行の法令は、全て効力を有している。
 〔2〕歳出上、政府の義務に関わる現在の契約または命令は全て第六十七条の例による。      


----------------------------------------------------------------------------
原文   大日本帝国憲法   国立国会図書館
----------------------------------------------------------------------------