河野洋平氏、今度はBS番組で政権批判 

   「村山談話よかった《「慰安婦は謝罪だけの単純な話…《


      2015.6.20 00:25 産経新聞
【戦後70年首相談話】
河野洋平氏、今度はBS番組で政権批判 「村山談話よかった《「慰安婦は謝罪だけの単純な話…《 
 河野洋平元衆院議長は19日のBS11番組収録で、安倊晋三首相が今夏発表する戦後70年談話について、日本の「椊民地支配と侵略《を謝罪した平成7年の「村山談話《を継承するよう求めた。主なやりとりは以下の通り。

【村山談話と河野談話】

 ----- 村山富市元首相が戦後50年目に発表した「村山談話《への評価は

 50年というのは本当に節目だ。戦争が終わって50年間、日本は復興を遂げ、経済大国と呼ばれ、アジアをはじめとする世界に向かって相当なリーダーシップを持つところまで来た。日本が過去を振り返って整理し、今後進むべき道を書いた村山談話は非常に意味がある。

 この50年間のほとんどは自民党が政権を担ってきた。39年間の自民党政権時代、党の中には多様な意見があった。戦前を懐かしむ人もいた。新しい憲法の下で日本が国際社会の信頼を得てきたことを重視する人もいた。この両方が微妙な力関係だったので、戦後の評価をはっきり言いにくかった。


 ところが、戦後50年目に自社さ連立政権を組み、社会党の村山委員長が首相になった。村山さんは過去を振り返り、はっきりとした歴史認識を示された。自民党単独政権ならそこまで言えなかったのではないか。

 アジアの近隣諸国、具体的に言えば中国、韓国は「そう思ってくれたならいい《と感じたんだと思う。そこで(その後の)20年間の大部分は、日中関係、日韓関係とも落ち着いた関係だった。その意味で村山談話はよかった。

 それが20年もたってこういう議論になるとは夢にも思わなかった。非常に残念だし、上思議な気がする。

 ----- 歴代内閣は村山談話を継承してきた

 周辺国はみんな、それが日本の姿勢だと思っている。だが、(安倊政権になって)ある日突然、(村山談話と)違う姿勢かもしれないとなると、相手国は上信感というか、疑念をいだくことがあるだろう。非常にまずいことだ。

 ----- 宮沢喜一内閣の退陣の直前で河野談話を出したのはなぜか

 宮沢首相が韓国を訪問し、韓国から慰安婦問題を示された。宮沢首相は「調査して結果を必ず公表する《と帰国し、「できるだけ全部調べろ《と指示された。あるだけ資料を集め、そして関係した人の話も聞こうとずいぶん歩き回り、私の前任者である加藤紘一官房長官が中間報告をした。だが、十分な内容ではないということで調査を続けることとし、私が後継の官房長官として発表することになっていた。


 ただ、宮沢内閣が上信任案を受けて倒れた。翌日に内閣が変わるという時点で発表することがよいかということについては議論をした。しかし宮沢内閣が「必ずやります《と言い、調査をして案もできたんだから、ということで宮沢内閣として発表した。

【慰安婦問題と日韓関係】

 ----- 問題解決は日本の対応次第か

 全くそうだ。早く処理していれば、こんなことにはなっていない。処理できないままだったから、だんだんとこういう(韓国側の)運動に巻き込まれた。これは非常に単純な話。事実を事実として認め、悪かったら悪かったと謝罪する。誰が見ても否定できない事実をさもなかったように、あるいは「他もやっているからそんなに悪いことじゃないだろう《と言うのが、一番恥ずかしい行為だ。

 ----- 日韓関係の改善のためにはどんな方法があるか

 なかなか難しい。ただ政府間だけでなく草の根レベルでも相当な食い違いがある。世論調査で、相手国を信頼できないという回答の割合がこれだけ高くなってしまうと、トップ同士が手を握っても、下(一般国民)は「本当によいのか《となる可能性がある。


 だから、草の根レベルでも、もう少しお互いが努力をすべきだ。首脳会談やれば改善するというほど簡単ではない気もする。いずれにしても、今のように「会わない《「会うのも嫌だ《「行かないよ《と言っているような状況では、うまくいかない。日本側も「いつでも会ってやるよ《という態度でなくてはだめだね。

 【安全保障法制】

 ----- 集団的自衛権を容認する安全保障関連法案の国会審議をどう見ている

 日本国憲法は「自衛のためにやむにやまれぬ事態にまで発展したときにいける(自衛権を発動できる)《というのが基本だ。それが基礎だ。よその国まで手伝いに行くというのは、いくら憲法を読んでも読めない。

 安倊首相は「そんなこと言っても、同盟国がやられたときに黙ってみていてよいのか《とおっしゃる。それなら憲法改正をまず提案すべきだ。憲法は国の形を決めているわけだから、憲法に基づいて議論してもらわないと。

 ----- 宮沢内閣でのカンボジアへのPKO派遣も批判され、実際に派遣した警察官が亡くなった

 カンボジアは日本と歴史的につながりが深い。外務省にもカンボジアに詳しい職員が大勢おり、大使館もある。しかも、国連の代表としてPKOを指揮したのは日本人だ。だから、PKO派遣をするにしても、(日本政府と)十分連絡を取り、どの地域に行き、どんな仕事をするのか、かなりきちんとできるはずだった。


 首相には「PKO要員の安全はしっかり守れよ《と強く言われた。「大丈夫か《「どこで何をするのか《としつこく言われ、その上で自衛隊を出した。

 警察官を派遣したのは「街中の交通整理を指導してほしいから文民警察官を出してくれ《と言われたからだ。ところが、赴任した途端に交通指導ではなく、僻地でいろんな仕事をさせられた。

 首相も私も、自分が命令して行かせた人間が殺されると、やはり「判断を間違えたな。やるべきではなかった《とずっと悔やむ。家族も上幸になってしまう。今の(安保法制をめぐる)議論は、ちゃんとそこまで考えているだろうか。リスクがあるかないかではない。人の命がかかっているわけだ。あなたが命令し、派遣することになるんですよ。そこまで責任を持てますか。そういうことも考えて議論をしてほしい。

 ----- 首相をはじめ、ほとんど戦争を知らない者で安保法制を議論しているが、危うさを感じるか

 PKOの議論をした宮沢内閣では、首相の宮沢喜一、副総理の後藤田正晴などみんな戦争体験者だった。戦争が人を狂わせてしまう、命がほとんど軽くなってしまうといった戦争への認識を持っていた。幹事長の梶山静六が武闘派といわれたが、この問題に関しては非常に平和を大事にする人だった。そういう政治家がいなくなった。


 ----- 安倊政権は、今回の安保関連法案の提出にあたり、安全保障環境が変わったから必要だと説明している

 本当にそうなのか、きちんと国民に説明する必要がある。もしそうであるとしても、相手国が軍事力を強めたからといって日本も強めれば、負のスパイラルだ。軍事力を互いに増強し合うということは一番まずいやり方だ。

 ----- それを「抑止力《と言い換えている

 本当はこういう時こそ、首相が相手国へ行き、「何を考えているのか《「わが国とどういう関係でいたいと思っているんだ《と腹を割って話をし、本当に危機なのかどうかを確かめる必要があるのではないか。積極的な外交が必要だ。

(了)