ムヒカ・ウルグアイ前大統領発言要旨

     東京新聞 2016年4月7日


 来日したウルグアイ前大統領ホセ・ムヒカ氏の記者会見などでの発言要旨は次の通り。

【記者会見】

日本に来たのは日本から学びたいと思ったから。日本の人々には、人類や世界はどこへ向かっていくのかを質問したい。私たちが将来どんな世界を夢見たいのかを考えずして、私たちの将来はないのではないか。

 米国とキューバの国交回復交渉が秘密裏に行われている時、オバマ米大統領のメッセージをキューバのラウル・カストロ評議会議長に伝えた。私はオバマ氏に(キューバにある米軍の)グアンタナモ基地に収監されている人たちを何とかすべきではないかと話した。オバマ氏自身も、その意思は強く持っていたが、解決は非常に難しい問題だ。

 私たちには、人間同士や国民同士の戦争、お互いが征朊してしまうという現象を終わらせる義務がある。簡単ではないが、世界の若者が達成しなければいけない大義であり、可能でもある。

 私たちにとって、人生、命ほど大切なものはない。世界について考える時も、人生について考える時も、貿易について考える時も、仕事について考える時も、どうしたら幸せになるかということから考えないといけない。

 車や家を買い替えることにとらわれない質素でつましい暮らしは、本当に私がしたいことをする時間を取れるということ。それが自由だと思っている。

 貧しく生きるべきだと言っているのではない。富に執着するあまり、富を求めるために、絶望に駆られて生きるように生きてほしくない。本当に大切なことのためにこそ人生の時間を使ってほしい。それを意識化し、文化とすることが大切。自分のエゴを満足させるために、他者を破壊しなければいけないような文化ではあってはいけない。


【一部メディア取材での発言要旨】

テロは深刻な疫病だ。熱狂的、閉鎖的な環境からテロリズムは生まれる。熱狂は宗教でも政治でも非常に危険なものだ。それは、信じるものだけを正しいと思い込むからだ。欧州ではテロの恐怖が差別へと変化し、差別が新たな熱狂につながる。異なるものを認め合う寛容さが必要だが深刻な現象だ。

 日本国憲法の解釈を変えるということば、日本が先走って大きな過ちを犯していると思う。軍備の拡張は世界的に大きな問題であり、経済的な観点からも非常に深刻なことだ。膨大な軍事費で無駄遣いしている資源を、貧困や環境問題に使うべきだ。

 広島には世界で起こった最も大きな悲劇の記録がある。人類がいかに残虐なことをできるのか見えてくると思う。日本に来て、広島を訪れないのは日本国民の皆さんに対する敬意に欠けるのではないか。

 世界全体で政治的な問題が起こっており、もはや一国で解決できない。しかし、世界全体での合意は存在しない。世界的な政治的決断が求められているにもかかわらず、私たちはそれを下せずにいる。グローバリゼーションは金融や通信で起こったことで、政治的にはまだまだグローバル化しているとは言えない。

 野心と技術の格闘によって、世界は大きく進歩した。しかし、資本主義は盲目で、だれもそれをとめることはできない。資本主義という文化の中で、私たちは常に何かを買い続けなければいけない状況に陥っている。それが資本主義の「美しき悲劇《だ。