自民党総裁選で、安倊晋三首相が石破茂・元幹事長を破って連続3選を果たしたことを報じる9月21日付の朝刊各紙
自民党の総裁選挙で安倊晋三首相が連続3選を果たしました。新聞各紙は社説で安倊首相への注文を書いていますが、1面には各紙の政治部長が論評しています。この各紙の論調の違いが面白いのです。
その前に、ひとつ注目点がありました。3選を果たした安倊首相を何歳と表記するかで新聞の判断が分かれたのです。9月21日付朝刊で、朝日と読売は「63《と表記しましたが、毎日と日経は「64《と書いています。どうして違うのか。安倊首相の誕生日が記事の掲載日だったからです。
つまり、安倊首相が総裁に3選された段階では63歳だったのですが、朝刊掲載日には64歳になっていたのです。そんな事情を知らないまま新聞を読み比べたら、「あれ、この新聞、年齢を間違えている《という反応が出てしまいそうですね。ここは、本紙はなぜこの年齢を表記したのか説明がほしいところ。この心配りが読者に親切なのです。
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さて、政治部長の論評を、まずは日経新聞から。
〈自民党総裁選に勝利した安倊晋三首相は、2021年9月まで向こう3年間の任期を手にした。任期いっぱい務めれば憲政史上最長の桂太郎をも超える。これより長い為政者は、黒船が来襲した徳川12代将軍にまで遡らなければならない〉
すごい表現ですね。「黒船来航《ではなく、「黒船来襲《ですよ。なんでこんな表現になるかと言えば、次の文章の伏線だからです。
〈いま日本を取り巻く環境は黒船以来といってもよい状況にある。貿易戦争の言葉が飛び交い、世界では力による政治、ポピュリズムが横行する。この3年間は日本の針路が決まる期間となる〉
ずいぶんと力が入っています。でも、「この3年間は日本の針路が決まる期間《と言われても、どの首相のときも「日本の針路《を決めてきたのではないでしょうか。
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毎日はどうか。
〈安倊晋三首相にとって苦い勝利に違いない。総裁3選を決めた顔に笑みはなかった〉
厳しい表現に以下が続きます。
〈昨年の衆院選で安倊自民が圧勝した時にくすぶっていた「信頼できない《「地方を向いていない《という「安倊1強《への地方の上満はさらに大きな声になり、党員票での石破茂元幹事長の善戦につながったのだろう〉
では、朝日はどうか。
〈問われたのは、「1強《がもたらした政権のゆるみとおごりだった。しかし、歴代最長の通算在任期間をうかがうのにふさわしい信頼を、安倊晋三首相が勝ち得たようには見えない〉
こちらも毎日と同じように厳しい論調です。意外だったのが読売。こちらも安倊首相に厳しい注文です。
〈ワンサイドゲームにも見せ場や、次の試合へのヒントがあるものだ。安倊首相の圧勝で終わった自民党総裁選も、そうだった〉
こう書き出して、安倊首相の「敵《として、「長期政権の惰性、おごり、飽き《を指摘しています。
〈政策より政治手法が焦点となり、国会議員票ほどには党員票で差がつかず、読売新聞の調査で「安倊1強は好ましくない《と答えた党員は59%にのぼった〉
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安倊首相への注文として、やはり長期政権のドイツのメルケル首相と比較している点が読ませます。
〈昨年の衆院選で自民党は政権基盤を強めたものの、比例選での得票率は33%だった。同時期の比例選主体のドイツ総選挙では、安倊氏以上に政権の長いメルケル首相の与党が得票率33%で「求心力低下《と言われた。同じ「3割政党《の評価を分けたのは、得票率以上に多数の議席を得やすい衆院の小選挙区制と、日本の野党の「多弱《ぶりだ。圧倒的な議席は「国民の支持《の実態よりも大きいと自覚せずに「選挙に勝ったからいいじゃないか《となってしまうと、独善的な政治に陥る〉
愛すればこその諫言でしょうか。説得力があります。
◆東京本社発行の最終版を基にしています。
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