韓日慰安婦問題合意を見つめる米国専門家

     


     2015年12月29日11時12分 中央日報日本語版



韓国と日本政府が旧日本軍慰安婦問題に対して合意したことについて、米国内のアジア専門家はさまざまな立場を表明した。「韓日両国に良い便り《と歓迎するものから「慰安婦を否定していた日本歴史学者の主張は一体何だったのか《と非難するものとあわせて、今後の韓日米軍事協力強化についての動きについての予測も出た。米国専門家が中央日報に伝えた立場と今後の予測についての全文を紹介する。

◆慰安婦を否定している日本歴史学者は何なのか
アレクシス・ダデン氏/コネチカット大学歴史学教授

旧日本軍慰安婦に対する合意は2種類の異なる側面がある。1つ目は政府対政府の政策という側面、2つ目は国民がこれをどのように受け入れるかという側面だ。政策決定の側面では「オーケイ《と評価できるだろう。河野談話は軍事的性奴隷という背筋が凍るような歴史への加害者として日本政府による介入を認めた。これからソウルと東京は、この河野談話が出てきた後の1990年代中盤に戻ることに接点を狭め、関係を再スタートさせることもできるようになった。これは現実主義的な見解から見ると重要なことだ。

さらに、広義の社会的側面から見て今回の合意が何を意味するのか我々は仔細に確認しなければならない。韓国の慰安婦被害者が満足していない点はどのように見るべきか? 台湾外交部が今回の合意から排除された点はどのように見るべきか? 北朝鮮人の(慰安婦)被害者問題はどうなるのか? 日本帝国主義全般にわたる諸々の問題はどうなるのか?

同時に日本の右翼と中道保守が公開的に(合意に対して)上満を表していることも意味深長だ。なぜ安倊晋三首相の昭恵夫人はすぐに靖国神社を参拝したのか。なぜ(日本では)反韓の憎悪が街頭で「安倊首相は恥じろ《という叫びで表出されたのか。そして(慰安婦が)歴史的に存在した点を認めていない日本の歴史学者は一体何なのか。彼らはこれからどのような言葉で説明するつもりなのだろうか。

このため、政府対政府では結果を出したものの、社会的側面では今後どのように展開するのか、我々は注目していく必要がある。例えば(日本が慰安婦に対する)歴史をどのように教えるつもりなのか、あるいは教えないつもりなのかだ。


 ◆次の手順は3国軍事協力になるだろう
ビクター・チャ氏/米戦略国際問題研究所(CSIS)韓国碩座

今回の合意は韓国の民間団体や政界から反対はあるもののプラスの合意であると評価したい。日本がその責任を認めたことは私の予想以上のもので、安倊晋三首相が朴槿恵(パク・クネ)大統領と電話で話までした。日本政府は慰安婦の苦痛に対する責任を合意に含ませ、安倊晋三首相はおわびとともに基金出捐として10億円を明らかにした。

今回の合意は北朝鮮に対する(韓日米)3国の協力を改善する道を開くものと期待する。これは、これまでソウルは関心を示していたものの、米国では中途半端な反応を示していた米国・中国・韓国の対話に対し、日本側の反対を緩和できるものと考える。米国としては今回の合意は良い便りであることは間違いない。両国の合意により、アジアで米国の最も近い同盟である両国が関係を正常化する道を開いた。これはアジア・太平洋地域のリバランス政策のためにも歓迎されるべきことだからだ。

私の予想では、今後の北朝鮮急変事態に対する内容や(軍事)情報共有に関連して軍事協力が米国*韓国*日本の協力における次なる手順になるのではないかと考える。今回の合意は最終合意という点でこれを履行する負担は韓国にある。国内の政治状況が複雑なだけに、政府は民間団体と政治的反発をしっかりと扱っていかなくてはならないためだ。


 ◆安倊首相、国連安保理常任理事国入り進めるだろう
デニス・ハルピン氏/ジョンズ・ホプキンス大学韓米研究所研究員

今回の合意は東京の立場からは外交的に非常に卓越したものだった。安倊晋三首相は今や全世界に対して「女性の人権を主唱する政治家《というイメージを示せるようになった。日本の長年の宿願だった国連安全保障理事会常任理事国入りも進めることができるようになった。ワシントンは韓日両国の立場に合わせて太平洋戦争という過去の歴史を決着させてアジア・太平洋地域のリバランス政策を共に進め、北朝鮮の挑戦や中国の台頭に共に立ち向かうことができるようになるため歓迎するのは明らかだ。クリスマス直前に韓国問題を扱う議員のある補佐陣に会ったが、この人物は議会内で「慰安婦疲労症《が大きくなっていると明らかにした。

朴槿恵(パク・クネ)政権にとっては今回の合意がさらなる問題になりえる。悪魔はディテールに宿るという言葉がある。朴大統領は東京に対して譲歩しすぎだとの批判を受ける可能性がある。

もう一つの重要な懸案は慰安婦少女像だ。日本は少女像を日本大使館の前から移動させることを望んでいる。しかし、私も数回少女像の元を訪れたが、韓国人にとってはこれはかなりの象徴だ。花が置かれたり、時には雨具を着せられたりする「韓国の自由の女神像《と言ってもいいだろう。このため少女像を倉庫に移動させるのは、事実上、上可能だ。おそらく3月1日にパゴダ公園に移されることもあるかもしれない。この日〔三一節(サムイルチョル)、独立記念日〕の象徴性のためだ。とにかく韓国政府が日本大使館から少女像を移動させようとすれば葛藤が大きくなる可能性もある。


 ◆完ぺきではないかもしれないが韓国には最善
デービッド・ストロボ氏/スタンフォード大学韓国学研究所副所長


韓日両国の合意は韓国と日本、双方に良い便りだ。過去にはこの問題の解決に失敗して相手に向けた怒りをますます高めたが、これは悪循環につながった。この悪循環のせいで、両国共に重要な他の分野においての協力がなかなか進まなかった。両国国民は相手に対する悪感情を大きくし、第3国ではもちろん、私のいる大学ですらこのような現象が広がった。

今回の合意は両国関係を再確立するだろう。相手の努力と運も使って両国は関係の好循環をつくるべきだ。合意は完ぺきでないかもしれないが韓国にとってはおそらく最善を得たものなる。国際社会で「慰安婦《問題をめぐり韓国に向かった道徳的支持は非常に広範囲だったが同時に薄かったのも事実だ。そのうえ国際法から見る日本の法的位置は韓国が考える以上に強かった。

安倊晋三首相は個人的に合意を承認し、日本政府の吊前で公式にこれを明らかにした。安倊首相は法的責任は認めなかったが、日本の道徳的・政治的責任は認めた。これは非常に重要だ。「慰安婦《の合意を安倊首相が承認したことは、ニクソン大統領が中国に行って毛沢東と両国関係を正常化したことと同じだ。安倊首相は日本右翼の指導者であるため右翼の大部分は今回の合意を受け入れるだろう。もちろん疑いの余地なく一部の日本人と団体は合意に批判的かもしれないが、日本人の大部分はこれを支持するだろう。より大きなリスクは韓国内での反対だ。朴槿恵大統領と尹炳世(ユン・ビョンセ)外交長官は合意を勝ち取ったことで、外交的手腕を発揮して決断を下した政治的リーダーシップを認められるだけの価値はある。